アメリカでアルゼンチンの優しさに涙

ちょっと野暮用でアメリカに来ました、赤子を連れて。アメリカに着いたとたん、アルゼンチン人の優しさに涙が出そうになりました。

ブエノスアイレスからヒューストンに到着し、飛行機にベビーカーを預けていたので降りたところでベビーカー待ち。それを受け取ってイミグレーションに行ったら、最後尾でした。優先レーンのサインを探したけれど見当たらず、おとなしく最後尾に並ぶ私。まぁ、アメリカだし、アルゼンチンじゃないし、と諦めて。

ところが、同じ飛行機で到着した人のほとんどはアルゼンチン人なわけで、行列に並びながら心配そうな視線を投げ掛けて来るのです。赤子連れの母親が並んでいる、と。ベベがぐずるので抱っこして、ベビーカーには入れていなかったのでなおさら。周りの人たちに「あなたは優先者なんだから、向こうのオフィサーに言って先に通してもらえるはずだよ」と言われるので、そうかもね、と思ってイミグレの職員にききにいったら「列に戻りなさい」とあっさりあしらわれてしまいました。

ここはアルゼンチンじゃないもんね、しょうがないよね、と思いつつ、アルゼンチンでさんざん甘やかされていた私はショボーン。でも私以上に周りのアルゼンチン人たちがショボーン。近くに並んでいたおばさんは、通りかかる職員を止めて、ベベ連れなのになんでダメなの、と掛け合ってくれたり。それでもダメと言われて、みんなでショボーン。アルゼンチン人たちが優しすぎて、涙が出そうでした。

それから、今回のフライトはコンチネンタルだったのですが、ブエノスアイレスの空港でのコンチネンタルの職員のおねーさんがこれまたとても親切でした。

大量の荷物をカートに乗せて、抱っこひもにベベを抱えた母親がひとり。ひとりということは、法的に有効な父親からの旅行許可証が必要だし、ふたりともパスポート真っ白だし(私のパスポートは盗難に遭い再発行、ベベのは新しいので真っ白)、なんだか複雑そう、と思ったようです。最初は「チェックインの前にまずイミグレーションにいって前のパスポートの入国の記録をもらってきて、それから戻って来てね」といわれ、また荷物を押してイミグレへ。その時点でへこたれそうだったのですが、さっきのおーさんが走って追いかけてきてくれて「なんだか面倒そうだから手伝うわ」と。「なんでアルゼンチンに来たの、なんでなくしたのパスポート、パパはなにやってるのよ、日本は子ども何人持てるの、あ、あれは中国か」など質問攻めにあい、まぁ、いろいろと複雑な人生を説明したところ、イミグレーションでも私の説明をかいつまんでイミグレ職員に伝えてくれ、旅行許可証もこれでOK、入国の記録はこれね、と必要なものを確認してくれました。

それから「あなたESTAとってるの? ならそこのインターネット屋さんでプリントね、ほら一緒に行くから」とそれも一緒に着いてきてくれました。それからチェックインの前のブースに一緒に戻り、周りのコンチネンタルの職員のおばさんたちに「まーこの子の人生いろいろ複雑で、でもほら許可証も書類も全部揃ってるのよ、まったくベベ連れひとりで旅するなんて無謀よねー」なんて言いながら、全部確認してくれました。そのあと、お仕事口調に戻って「誰がこの荷物をパッキングしましたか?」なんて言ったとたん、親戚のおばさんのお仕事姿を見たときの違和感のようなのを感じるほど、親身になってお世話をしてくれました。

アルゼンチンでは、妊婦時代から乳児を抱える現在まで、ずーっとみんなに優しくしてもらっています。バスや地下鉄で座れないということはまずなく、乗ったとたんにみんなが我先にと席を立ってくれたり、運転手さんや周りの人が「赤ちゃんいるから誰か席譲ってあげてー」と言ってくれたり、ベビーカーを畳んだり持ったりするのを見知らぬ誰かが手伝ってくれたり、手を引いてくれたり、そういうふうに助けてもらっているので、子育てに苦労を感じることはほとんどありません。

スーパーでも、役所でも、空港のイミグレーションでも、優先レーンがあり、赤子を抱えて並ぶということはありません。優先レーンがない場合でも、赤子連れはごぼう抜きで割り込みするのが当たり前で、それをする勇気が出ずにまごまごしていると、周りの人が「あなたは並んじゃダメよ、一番前行きなさい」と言ってくれます。今回ブエノスアイレスの空港でも「並ぶ必要はないよ」ではなく「並んではいけない」「あなたは優先なんだからあっちに行きなさい」と言われました。

それがあたりまえで、赤子を抱えた母親がまごまごしていると、周りの人も気をつかって落ち着かない気持ちになるので、堂々と一番前に割り込むのが周りの人も安心するんだということに気づきました。今回もまさにその状況。優先で通してもらえないからなおさら、周りの人が心配して気遣ってくれて、みんなでやるせない気持ちになっていました。アルゼンチン人(というかおそらく南米人)本当に優しい。

こういった、ベベ優先という習慣のほかにもうひとつ、わたしの子育てにとっても助かっているのが、街で会う人たちとの会話です。赤子を連れていると、いつでもどこでも話しかけられます。バスに乗って隣の人に話しかけられないというのはたぶん10人に1人くらいで、話しかけられるのが当たり前すぎて、誰にも話しかけられないと「なんで?」と思ってしまうほど。子どもとふたりだけで息が詰まりそう! なんて気持ちにはなったことがありません。一歩外に出ると、たくさんの人が話しかけてくれるから。

特におばさんたちは赤子をみるとすぐ「かわいいわねー」「ちっちゃーい」「おなまえはなーに?」「アルゼンチン人なのねー、かわいいポルテーニャちゃん」なんて話しかけてくれるので、こんな風に毎日たくさんの人に話しかけられていると、自分が大きくなっても当たり前に他人の子どもに同じことをするのだろうな、と容易に想像がつくほどです。実際、10歳にも満たないような子どもでも、おばさんと同じような声で赤子をあやしてくれたりします。

また、かわいがるだけではなく、例えばちょっと薄着で出かけてしまったりすると「ベベが寒いわよそれじゃ」とか、帽子がずれて視界が遮られていると「まー、それじゃ何にも見えないじゃないの、かわいそう」とか、首が変な角度の状態で寝ていると「それじゃ首痛いわよー」なんて注意されることも多々。私自身初めての子育てなうえだいぶおおざっぱなので、そういうことを注意してもらってとてもありがたいです。

妊婦や赤子連れに優しくしなきゃ、という意識はきっとこの国の人たちにはあんまりないと思います。それが当たり前のこと過ぎて、意識するほどのことじゃない。挨拶するのと同じくらいの当たり前のことなんだろうな、と思います。まさに社会全体で次の世代を育てていくという感じ。教育や医療が無料であるというのも、同じことなんだと思います。逆に言えば、アメリカではベベに譲らないのが当たり前で、それを冷たいとは誰も感じていないのだろうと思います。そういう社会だから。

アルゼンチンのことを何にも知らずに来て、こちらで出産したけれど、ほんとうによい選択をしたと思います。子連れではなく、自分ひとりだけだったらおそらく世界にはほかにもたくさん刺激的で楽しい土地がいっぱいあるでしょうし、ブエノスアイレスの好きじゃないところもあるけれど(特に食文化!)、それでも、妊娠&出産という人生の一大イベントをする場所としては、ブエノスアイレスはトップクラスにいい場所だと思います。

妊娠したときに、どこで産むかちょっと悩みました。それまで暮らしていたタイに戻るか、日本に留まるか、目的地だったブエノスに行くか。長いこと日本には暮らしていなかったこともあり、日本での子育てにすごく不安を感じ、日本という選択肢は最初からあまりありませんでした。では慣れているタイに戻るか、見知らぬ土地ブエノスへ行くか。最終的には、ブエノスに懸けました。それが大当たり。

こうして毎日たくさんの人たちに優しくされているのが、自分にとっても当たり前になってきています。そして、私はこれほど人に対して優しくしてあげていないことを顧みて、恥ずかしい気持ちになります。今は赤子連れなので、最優先されますが、ベベが大きくなって優先対象じゃなくなったとき、わたしも同じように周りの人たちに優しい人間になろうと思います。

ありがとう、アルゼンチン。よそで冷たくされてからありがたさを痛感するなんてごめんなさい、アルゼンチン。

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