脳味噌の自己融解を防ぐ – 「ハッカーと画家」を読んでその2

2008くらいに書いた。

ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち
ポール グレアム
オーム社
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「ハッカーと画家」を読み始めたときの感動はここ.そのとき浮かんだことをそのまま書いてある.読み終わってあらためて、自分の状況に置き換えて考えたこと.

あるウェブサービスを知ったとき、それがまだバージョン1で、十分なユーザを集めていない実験的なものだったとしたら、即ユーザ登録をして使ってみる、というほうをとりたい.たぶんそこにはまだまだバグだらけで、使いづらい部分もあるだろうけれど、そういうバグを探して、サービス開発者に教える.そうするとなにか、自分も開発に参加しているような喜びも得られる.

多分、ベータの段階で使うことに抵抗がある人もたくさんいると思う.でも、わたしの印象としては(一概には言えない、あくまでも個人的な印象)サービスのバグが取れて落ち着いて、ユーザが増えてポピュラーになってきたときには、なんというか、最初の段階のエキサイティングさがなくなってしまう気がする.

たぶん、開発も落ち着いてしまい、運用、オペレーション業務中心の作業ばかりにおわれ、やれるとしてもある特定の機能の追加とか、ちょっとしたバージョンアップとか、その程度の開発になってしまって、開発者としても少しばかりうんざりしているに違いない.

開発者のうんざり気分というのはなんとなく伝播するのか、メジャーになったサービスの開発に参加したい! と思うあたらしい開発者がアプライしてくると同時に、当初の開発者は抜けて、別の新しいエキサイティングな開発に移っていくんじゃないかと思う.GoogleもTwitterもそうだ.ひとところに落ち着いていられないんだろう.

こういう「エキサイティングさを重視する」とか、「ひとところに落ち着いていられない」とか、そういう態度って、たぶん、こういう業界以外のひと、たとえばわたしの母のような人間から見ると「危なっかしいギャンブラー」に見えるに違いない(実際そんなようなことを言われたこともある).中学の頃、仲の良かった先生、今でも飲み会に呼んだりする先生に「お前はギャンブラーだもんな」といわれたことを思い出す.ギャンブルは人生じゃないが、人生はギャンブルに近いのかもしれない(from the other point of view).

こんなことをいってしまっては元も子もないけれど、わたし自身が今自分の仕事で、どうも行き場のないどん詰まり感のようなストレス、というか圧迫感のようなものを感じているのはそのせいだと思う.外的要因じゃない.誰かにストレスをかけられているわけでは決してないし、誰よりも働きやすい環境においてもらっていると思う.まぁ暮らせるだけのお給料はもらっているし、仕事に関しては一目置いてもらっているし(ただし、今のところほかに誰もいないから、というだけなのかもしれない)、自分自身納得がいかないけれど、こうしてどん詰まり状態でまともに作業が進まない日の多い月でも、同じだけのお給料がもらえる(不思議だが有難い).

それでもなにかストレスがあるように感じるのは、原因は単に、自分自身の性質がそうなわけで、小さなカスタマイズ、それも「やらされている感」のともなうそれ、日々の運用業務、それに時間をかけるのがどうしても苦痛だ(これは以前からずっと感じていたけれど、今まで生きてきた社会で「やらなきゃならない単純作業に苦痛を感じる」というのを表に出すのはタブーとされている風があるため、人には言わなかった.子供でも言わないだろ、文句言うな、というはなし.実際そのとおりだし).本当はすることが腐るほどあるのに、その「すること」じゃなくて、脳みそのほうがどんどん腐っていっている感じがするのだ.

「腐っている」という直接的な言い方はしなくとも、時々わたしが「脳味噌を取り出してママレモンでしわとしわの間をきゅきゅきゅッと洗いたい」とか言い始めたらそれは、エキサイティングさを見失い、ブレイクスルーを必要としているときのサインだ、たぶん.「洗うべきしわが見当たらない」なんていい始めたらもう相当重症だ.

脳死患者の脳細胞は酵素を出して、脳みそを自己融解させる.しばらく脳死状態で「生かされて」いた肉体(あるいは死体)から脳みそを取り出すと、どろどろに解けていて、指と指のあいだからにゅるりとこぼれ落ちてしまうのだそうだ.

今まさにわたしは自分の脳みそがそのような状態にあるような気がする.で「ハッカーと画家」を読んでいたら237ページにこんな言葉があった.

今の仕事で脳味噌が腐っていってるんじゃないかと心配しているとしたら、多分腐っているよ.

だろうな.そしてみんな、そういう感覚を味わったことがあるんだな(この本を書いた本人でさえ、その経験があるからこの言葉がある).それでももっとすばらしいハッカーになっていくんだ.

この本の最後のパラグラフ.

自分をすばらしいハッカーにすることができるとしたら、その方法とは、自分自身に対して次の契約を結ぶことだ.以降、退屈なプロジェクトの仕事は一切しなくてよい(家族が餓死しそうでない限りは)、その代わりに、絶対に中途半端な仕事はしない.

幸いなことに、いまのところわたしが食わせるべき存在は、自分自身と猫2匹だ.

マイクロソフトがかつて成功したのは、IBMが落ちぶれていくチャンスを見逃さなかったからだそうだ.IBMが落ちぶれていかなかったら、マイクロソフトの成功もなかったかもしれない.ちょっと汚い例だけれど、これは、成功の一つの「きっかけ」だ.

友達を見ていて思う.「きっかけ」が彼女の周りにわんさと集まってきているのに、彼女には何も見えていない.もしかしたらわたしの周りにも、「きっかけ」がわんさと転がっているのかもしれない、ただ見えていないだけで.

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