愛着障害

ルナールの「にんじん」は毒親による虐待の話

にんじん (こども世界名作童話)
田村 セツコ ジュール・ルナール サレナ・ドラガン Jules Renard
ポプラ社
売り上げランキング: 868,370

こども世界名作童話をセットで買ったので、それに含まれているルナールの「にんじん」を寝かしつけに読んだ。

これはひどい。

母親による精神的虐待によって回避型に成長してしまった「にんじん」の話だ。父親はわかりやすい虐待はしていないけれど、母親がにんじんを酷く扱っても助け舟を出さない時点で、父親も虐待の加害者だ。でも、主人公「にんじん」は、父親は直接的に意地悪をしないので、加害者だと思っていない。

父親自身もおそらく回避型の傾向がある上に、にんじんに対する愛情表現もほとんどない。おそらくにんじんの気持ちを汲み取るとかもできないタイプだ。それでもにんじんはお父さんからの愛情を求める。

お兄さんとお姉さんのいる末っ子のにんじんは、母親に嫌われていて、ことごとくいじめられている。人前で辱められ、意味もなく叱られ、食べ物だって他の兄弟より与えられていない。父親からもらったプレゼントを取り上げられ、家の仕事を言いつけられる。

それでも最初の頃は、健気に、母親に愛されようとする。そして、父親にも愛されようとする。一生懸命頑張るが、愛は返ってこない。本の最後では、父親に「お母さんが嫌いだから一緒に暮らしたくない」と訴える。そして父親に「お父さんがお母さんを好きだと思うのか」なんて言われる。

まさに毒親。

辛すぎる。

こんな扱いを受けたら、愛着がズタボロになるのは当然で、にんじんはすでに相当回避型の傾向がある。

最後に幸せに終わるのかと思って寝る前に全部読んでしまったが、最後も悲惨で、これは子供に読ませていいものかどうか、というレベルで考えてしまった。

あとがきに、これはルナール自身の子供の頃の話に基づいている、というようなことが書いてあって、ああ、なるほど、と思った。母親の酷い扱いを、文学にして全世界に晒してやろうという怒りみたいなものなのかもしれない。

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ムーミンの登場人物と愛着を考える

最近ムーミンばっかり見ている。娘がムーミンブームだからだ。ムーミンって、いかにも子供向け、っていうわけではなくて、登場人物たちが結構癖があって、色々考えるのが面白い。

以下は私の私見、ひとのことをあーだこーだいうのは好まないけど、アニメの登場人物ならいいかな。

わかりやすいのはスナフキン。いかにもな回避型だ。テントをはって川岸で暮らし、ムーミン谷のメンバーが冬眠する前に、荷物をまとめて旅に出る。みんなが冬眠するのを見守ってから出発するのではなく、みんなが眠ってしまう「前」に旅立つというところがいかにも回避型だ。でも、普段はとても穏やかで、ムーミンたちが困っていたりすると助けたりして頼られている。でも、旅に一緒に連れて行って、というムーミンのお願いは断る、当然だ、回避型だから。友人としてはいいけれど、たとえばスナフキンが恋人だったらすごく辛いと思う。でも、素敵に見えるんだよね、こういうタイプ。

超安定型なのはムーミンママ。周りがぶっ飛んだことをしても、あらあら、というだけで決しておこることはなく、なんでもうけとめる。或る日突然パパが「旅に出るぞ」といっても「そうですか、じゃあ一緒に行こうかしら」といって準備して付いて行ったり、「気をつけて行ってらっしゃい」と気持ちよく送り出す。困っている人がいると、まずはとにかく共感して、それから安心させてあげる。ムーミンママみたいになりたい。

ムーミンパパもおそらく回避型。捨て子だった上に、フィヨンカさんそっくりのしつけの厳しい院長のいる孤児院にいたということもあり、とにかく面倒なことがあると逃げる。会いたくない人がいたり面倒があったりすると、洞窟に隠れる。そして、よく旅に出る。捨て子だった=愛着に深い傷が付いているところに、過干渉の院長ときて、回避型の傾向が強まったのだろう。でも、安定型のムーミンママとであったことで、家族を持ってムーミン谷にいちおう定住する気になるくらいまでは安定したのではないだろうか。でもやっぱり、時々旅に出る衝動は抑えきれない。

ムーミンはママの影響か安定型に見える。素直で共感能力が高い。たとえば恋人のフローレンがニョロニョロに髪の毛を焦がされて泣いている時に「僕、暗くてあんまり見えなかったよ」とか言えるし、その後スカーフで隠しているのに「そのスカーフとっても似合っているね」とか「きれいだよ」って言える。男前だ。

フローレンは自己愛性&演技性パーソナリティっぽいところがある。自分が中心じゃなくてはいけなくて、思い込んだら大げさに演技をするようになりきってしまう。自分の外見やステータスなんかにとらわれるタイプ。人をコントロールするために大げさに話す(本人は嘘をついているという認識はあまりない)ことも多い。ただ、人に対する気遣いはあって(方向性が間違っていることも多いが)、共感能力がないわけではない。

フィヨンカ夫人は、過干渉の毒親だ。子供たちに対して、あれしてはいけないこれしてはいけない、こうしろああしろ、ということばかり言い、子供達の友達をジャッジしてあの子とは遊んではいけません、っていうことを言う。こうしろああしろ、という指示に対して「なぜそうなのか」の説明はなく、私がしなさいって言ったらするのよ的態度。子供より先回りしてなんでもやってやるタイプ。子供達もこんな親に育てられたら、愛着障害になりそうなものの、フィヨンカ夫人の目を盗んでムーミンたちと遊ぶようになって随分変わる。フィヨンカ夫人は、子供に対してだけでなく、自分も「こうあるべき」を曲げることがなく、また、自分より美しいものを持っている人がいたりすると貶めようとする。非常に神経質。

森に住む魔女のクラリッサもフィヨンカさんとは別の方向性だが過干渉の毒親だ。この人も孫のアリサの友人関係をコントロールしようとする。アリサもこんな毒親に育てられれば回避型の傾向を強めかねないが、フィヨンカさんのところの子供たちと同じく、ムーミンたちと交流する上で安定しているのではないかと思われる。

ちっちゃい夫婦のトフスランとビフスランは、人のものは自分のものにしてしまう。欲しいものはなんでも自分のものだ。別に力づくで奪うジャイアンタイプなわけではなくて、さっとこそっと持って行って隠してしまう。でも、取り返しに来られるのを極端に恐れていたりする。こういうタイプってなんていうんだっけ。

ほかにもいっぱい面白いキャラクターがいて、みんなそれぞれクセが強い。いたずらっ子のミイとか、なんでも凍らせてしまうモランとか、植物学者のヘムレンさんとか。

ムーミンおもしろい。超安定型のムーミンママとそれを引き継いでいるムーミンの存在がなかったらこの谷は相当なカオスになると思う。原作者はこんなにいろんな癖の強いキャラを考え出したなんて、すごいな。

参考書籍はこのへん。

愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)
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回避性愛着障害 絆が稀薄な人たち (光文社新書)
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生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害 (朝日新書)
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娘の、悲しんで(怒りとして表現して)いる人への対応にはっとした

以前娘がプレゼントしてくれたネックレスが絡まった。細いシルバーの糸をよりあったものに淡水パールを通したものが数本まとまっているもので、すぐ絡まる。

こんなのだけど、チェーンじゃなくて糸(しかも細い糸)なので絡まりやすい。多分ハンドメイドのもの。

解こうとしてもなかなかほどけない。どんどんからまっていく。

娘が選んでくれたのに、大事なものなのに、どうしてこうなっちゃったの。

涙が出そうになりながら必死に解こうとしても解けない。だんだんイライラしてきて、もうぐちゃぐちゃっ、キー! ブッチン、バラバラバラー! ってやってしまいたくなる。

「なんでこうなってるの!」
「解けないよー! もうやだよー!」
「なんでー、なんでー! なんでこんなぐちゃぐちゃなのー!」
「だいじなものなのになんでぐちゃぐちゃなの!」
「だれがやったのよう! なんでなのよう!」
「せっかく娘がくれたのに!!!」

なんて悲しみを通り越して怒りで叫びながらほどこうとしていたとき、むすめがそっと私のそばに座って、私の背中や肩に手を置いていった。

「だいじょうぶだよ、ゆっくりじかんをかけてやれば、いつかきっとほどけるから」
「わたし、おこってないよ。わかってるよ、ママがわるいんじゃないよ」
「いまできないなら、あとでまたやったらいいよ」
「だいじょうだからね」
「悲しいよね」

とても穏やかに優しくそう言って私の背中を撫でてくれる。なみだがぽろんとでた。

私は、反対の立場だったら娘みたいにしてあげられる自信がない。自分に相当余裕がないときっとできない。

「ちょっとかして、解いてあげる(できるかどうかわかんないけど)」といって取り上げる。
「イライラしないの!」って逆ギレする。
「せっかくプレゼントしたのに、大事にしてよね」ってせめる。
「なんでぐちゃぐちゃにしちゃったの」って悲しんでみせる。
「落ち着きなさい」って命令する。
しまいには「うるさい! 文句ばっかり言わないで!」っておこる。

私ならこんな対応をしてしまう。これって、毒親の典型例で、親業トレーニングとかでは「やってはいけない例」としてあげられている行動。わかっているんだけど(本読んだから)でも、やっちゃう。

親業―子どもの考える力をのばす親子関係のつくり方
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それに愛着障害のある人は、悲しんでいる人を見ると怒りを覚える、っていうが、私はまさにそれなんだと思う。

愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)
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娘のとった行動は「共感を示す」「ボディタッチをする」「明るい未来を見せる」「悲しみと怒りを理解して受け止める」「責めない」。

もうどっちが親だかわからない。

5歳でこんな大人の役目を負わせてしまっている自分がとてもとても情けなくなった。子供の頃に大人の役目を背負わされた人は、愛着障害になりやすいという。例えばそれはうつ病の親だったり、夫婦の問題を子どもに相談する親だったり、小さい兄弟の世話を任されたりした人だったり、という場合だ。

私ももしかして同じことをしているんじゃなかろうか、っていうかこれはしてる。娘が人に共感を示す(感じるだけでなく表現する)ことができる人間になっているというのはとても喜ばしいことである反面、自分の子供みたいな反応と、いかにも愛着障害のある人的な逆ギレ反応をしていることにすごく反省した。

ちなみに、寄り添ってくれた娘の横で、黙々とやっていたら最終的にネックレスは解けた。

「やったー! ほどけたよ! よかったー! うれしいよぅ!」

と喜ぶ私に娘。

「よかったね! 言ったでしょ、ゆっくりやれば解けるって」

と言ってくれた。

本当どっちが大人だかわからん。