オランダでは日本人はスイス人と同じように暮らせる、らしい

最近はPMSのことばかりだったけれどちょっと違う話題も。

私は20代の初めに日本を飛び出して、2つの国に住みました。そのうちのひとつであるアルゼンチンでは永住権ももらいました。今住んでいる国には通算10年近く住んでいます(そんなにたったのか…)。でも、いまだにまだ迷走中です。

先日、オランダ人の友達がうちにしばらく滞在してすごいニュースをもたらしてくれました。

「100年くらい前に日本とオランダのあいだで交わされた条約が最近見つかって、日本人はオランダでスイス人と同じように住むのも仕事をするのも自由になった」

これってすごいニュースではないですか。外国暮らしが長いと一番面倒だなと思うのはビザだの労働許可だのですが、それについてずいぶん自由になるということ。オランダは教育制度や美しい町並みから、住んでみたいなーと言う思いはずっとあったのですが、これを聞いて断然移住したくなりました。

娘の学校にはオランダ人がけっこういて、ママ友さんたちとオランダの学校制度について話しました。彼ら曰く「オランダの教育制度は素晴らしい」「でも学校はコンクリートの四角いやつ(今の娘の学校はとても開放的で庭の中に教室があるかんじ)」「でもいまこの国でのんびり暮らすのに慣れてしまったらオランダなんて疲れるから暮らせない」「でも子どもが自分で歩いて学校に行けるっていいよね」と言います。

彼らの言うことの「オランダ」を「日本」に置き換えたら私の感想です。でも、日本は外国人にはおすすめ。ってことはもしかしてガイジンとしてオランダに住むのは悪くないんじゃないの?

今の国はとても居心地がよいのですが、この国で娘をティーンエイジャーにしたいかと問うと答えはNOです。そして私自身は田舎出身ですが、オーガナイズされた都市というのが好きなのです。雑然混沌としたアジアもいいですが、きちんと計画されて造られた都市に住みたいという気持ちがあります。

オランダ人の友人知人が何人かいますが、オランダ人の英語は完璧です。さらに他にもいくつかの言語ができる人がほとんど。言語教育が素晴らしいに違いない。

と、ポジティブなところばかりみていますが、件の友人曰くオランダには仕事がないそうです。

学位はマスターくらいは最低限とっておくべきで、それでも学校を出たあと6か月契約の無給のインターンシップで「職歴」というポイントを手に入れて、ようやくお給料の出る仕事にアプライできるとか。さらに、それでも3か月、6か月契約というのが当たり前で1年契約の仕事なんてなかなか見つからない、そうです。ちなみに彼女は文化人類学を勉強してきた人で、そもそも職場が少ない、という問題もあるそう。

2つの国に住みましたが、どちらも自力で住みました。駐在員とかではなくて、自分で仕事を見つけて、自分で渡航して。アルゼンチンではほぼ全ての手続きを自分でやりました。ビザも家探しも役所の手続きも何もかも。渡航当初はスペイン語は全くしゃべれませんでした。移住してみること、それに伴う煩雑な手続きなんかをすることは結構なきたくなる辛い作業だったりしますが、それでもそういうことをするのが好きなようです。いつかはオランダもチャレンジしてみたいなーなんてぼんやり思いはじめました。

この条約が今後どう運用されていくのか注目です。

アルゼンチンは牛肉だけでなく乳製品も安全だった!

PMS持ちのわたしが、食肉と乳製品を避けている理由は、そこに含まれるホルモンです。つまり、ホルモンが含まれていなければもちろん美味しく頂きたいのです。別にアレルギーとかじゃありません。まぁ、日本で食べる牛肉とか脂っこくて好きじゃないですが。

前回書いたように、アルゼンチンの牛肉はおそらくホルモン剤フリーであることから、もうこれでもかというほど食べています。でも、乳製品については未調査のため、様々な乳製品を食べつつも(アルゼンチンで乳製品を避けるのは至難の業)、不安な気持ちで一杯でした。

しかしそれもこの瞬間まで。

なぜなら、アルゼンチンはrBST(たくさん牛乳をださせるための成長ホルモン)を禁止していると知ったのです。

No major dairy producing country, except Argentina, has banned the use of local and international rbST hormones. Nearly 25 countries have approved the use of rbST. Among the top U.S. dairy importers with rbST approval are Algeria, Brazil, Bulgaria, Costa Rica, the Czech Republic, the former Soviet Union, Honduras, India, Jamaica, Mexico, Namibia, Pakistan, Romania, the Slovak Republic, South Africa, and Zimbabwe. The three leading dairy producers, the EU, New Zealand, and Australia have delayed the use.

via TED case studies –  Bovine Growth Hormone (rbST) and Dairy Trade (May 1997)

1997年の情報ですが、どうやらその当時はアルゼンチンが唯一禁止していたそう。現在では、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、日本、イスラエルでも禁止されているようです。

rBST has not been allowed on the market in Canada, Australia, New Zealand, Japan, Israel or the European Union since 2000. Argentina also banned the use of rBST.

via Bovine somatotropin – Wikipedia

もう明日から安心して、チーズ、クリーム、牛乳その他、楽しめそうです。あと1週間だけど。

考えてみると、わたしが怒り方面のPMS症状(エストロゲン過剰が原因と思われる)が悪化したのは、アルゼンチンを去ってしばらくした頃でした。現在住んでいる国では、ホルモン剤使用に対して全く厳しくなく、またいろいろ管理も適当な国なので、国内向け食品は相当汚染されていると言われています。PMS症状がでるまでは、あまり気にすることなく何でも食べていました。

PMSを発症してから、だんだんといろいろと調べるうちに、野菜はオーガニックを増やし、肉を減らし、乳製品も減らしていました。それでも完全に断つことはできずにいたので、それなりにとっていたことと思います。

もうすぐその国に帰ります… あぁ帰りたくない。

アルゼンチンの牛肉は美味しいだけでなく安全

IMG_3631牛肉ばかり食べている今日この頃。

今回のアルゼンチン滞在は短いので、観光客気分で肉づくしです。1回でだいたい500グラムくらいは食べます(もっと食べてるかも)。そんなことを週2回くらいやっています。

IMG_3630私は元来、あまり肉を食べなくても生きていられる(むしろそれほど好んで食べたいと思わない)のですが、アルゼンチンにいるときだけは別です。アルゼンチンカルネはとんでもなく美味しいのです。毎日でも食べたい。

日本や現在住んでいる国で焼き肉屋へ行くと、食べているときはまあ美味しいなと思って食べているのですが、食べたあとに必ず吐き気に襲われます。体が肉を受け付けないのかしら… と思っていましたが、そんなことはありませんでした。これだけ食べてもぜんぜん平気。胃もたれもないし、お腹が痛くなることも、吐き気もない。苦しくて動けないよぅ、という感覚もありません。なんだろうこの違い。

さて、PMS持ちとして気になるのは、牛肉に含まれるホルモンです。もしアルゼンチン牛がホルモン漬けの牛肉だったら、わたしの今月のPMS期はほんとーにたいへんなことになるでしょう。一応調べた限り大丈夫そうだったのでこんな勢いで食べています。

アルゼンチンの牛さんは、放牧で育てられているものと、飼育場で育てられているものの2種類があるようです。飼育場で育てられている牛さんの割合も増えてはいますが、まだまだほとんどの牛さんは放牧で育てられているそうです。

たいていのアルゼンチンの牛は牧草を食べて育ちます。また、飼料にホルモン剤及び抗生物質をいれることは禁じられています。耳につけるタイプのホルモン剤等も使われていません。さらに、牧場でのびのびと育てられており、小さいスペースにぎゅうぎゅうに詰め込まれたりはしていないようです。”grass fed”と書かれている食肉や乳製品も、牧草飼料を与えられているからと言って、それは飼料が草であることを意味しているだけで、放牧されているとは限りません。

日本やEUでは成長ホルモン剤の使用が禁止されています。EUはホルモン剤を含んだ牛肉も輸入禁止ですが、日本はホルモン牛の輸入は認められています。アメリカ・カナダ・オーストラリアの牛肉はホルモン剤入り。ただしタスマニア産はホルモン剤不使用。

わたしは、自分自身がホルモンにいろいろと翻弄されてきたので、外部からホルモンを摂取するのはいいことではない、と実感しています。でも、たぶん自分がPMSになっていなくて、あるいはなっていてもいろいろ実験したり調べたりしていなかったら、ホルモン剤くらいたいしたことないでしょ、と思っていたに違いありません。

エストロゲンなどのホルモンを過剰に摂取することが、乳がんをはじめとするさまざまな病気の原因と言われています。若い頃は、タバコ屋お酒が体に悪いと言われてもピンときませんでしたが、今は実感しています。ホルモンも体には良くない。

アルゼンチンがそのプライドにかけて今後も安全でおいしい牛肉を生産し続けることを、そしていつか日本がその輸入を解禁することを切に祈ります!

ところで乳牛はどうなんだろう…?

参考:

約2年ぶりのアルゼンチン所感

約2年ぶりにアルゼンチンに帰ってきた。以前と同じ家、同じ大屋さん、同じ交通整理のおじさん。同じ乾物屋で同じおじさんがHola! と声をかけてくれる。同じ八百屋、同じスーパー、同じ服屋、同じ洗濯屋、働く人もみんな変わっていない。

2年近くのときが経ったとは感じられないほど、何もかもが以前と同じだった。なんだろうこの安心感。

でも、モノの値段は2倍になっていた。100ペソ札が飛ぶように消えてゆく。

けれどもドルに対してペソの価値が半分くらいになっているので、ペソで見ると2倍になっていても、ドルから計算すると2年前とだいたい同じだ(むしろちょっと安い?)。換金レートも相変わらず闇レートとオフィシャルレートの差が大きい。オフィシャルレートでは1ドル8.5前後、闇レートでは15.5くらいだ。2年前は、6,5とかなんとか言っていた気がする。

私たちの暮らす場所は、ブエノスアイレスと言ってもプロビンシアなので、コーヒーが一杯15ペソだった。2年前も10ペソくらいだった気がする。ブエノスアイレスのカピタルでは今は20とか25ペソだとか。

記録のために現状のいくつかモノの値段を書いておく。

品名 価格(ドル換算闇レート/公式レート)

  • イチゴ1キロ 24ペソ(1.6ドル/2.8ドル)
  • 空港からのタクシー代 608ペソ(40ドル/78ドル)
  • コーヒー1杯 15ペソ(1ドル/1.8ドル)
  • 絵本1冊 120ペソ(8ドル/14ドル)
  • ベビーシャンプー1本 21ペソ(1.4ドル/2.5ドル)
  • 洗濯屋1箱 50ペソ(3.35ドル/6ドル)
  • 牛肉(vacio)1キロ 70ペソ(4.69ドル/8.3ドル)

そんなわけでハイパーインフレ、それからデフォルトで世界から信用をなくしているアルゼンチン経済。そんな状態なのに、人々は2年前と同じところで同じ商売をして同じように肉を食い、ワインを飲み、昼にはしっかりシエスタで休んで暮らしている。

例えば、東京やバンコクは、2年もたつといろいろと変わってしまっている。人の入れ替わりも激しく、同じ店にいっても同じ人が働いているとは限らない。或は私の実家のある日本の田舎に2年ぶりに行くと、同じ店が同じ場所にあるが、シャッターがおろされたまんまになっている場所がものすごく増える。

なんだろうこのアルゼンチンの安定感(すごく不安定なのに安定しているふしぎ)。

アルゼンチン経済は安定したためしがなく、過去になんと7回もデフォルトを経験しているらしい。それでも人々は平気で暮らし、政府批判をしつつも強い愛国心を持ち、肉とワインとマテ、そして文化を愛している。

決して安定して落ち着いた国ではなく、かといって東南アジアのような新興国でもない。ゆっくりと落ちぶれていっているプライドの高いヨーロッパ気取りの南米国家。けれどもあまりの変わらなさに、なんだかほっとして、またここに暮らすのも悪くないなと感じている。

アルゼンチンでの永住権申請の記録

もうだいぶ前のことですが、アルゼンチンの永住権とDNIを申請してきたときのお話です。私自身、色々調べても調べが足りなくて大変な思いをしたので、今更ですが記録しておき、誰かのお役に立てば幸いです。

私は、アルゼンチンで出産後、アルゼンチン人の親として永住権を申請、取得しました。

アルゼンチンは出生地主義で、子の国で産まれた人はみんなアルゼンチン人です。そしてその親は永住権をとることが出来ます。なのでさっさとやっておけばよかったのですが、色々書類を日本から取り寄せたり、翻訳したり、途中で日本に帰ってしまったのでやり直したり、色々面倒だったのです。

あとは調査不足で、パスポートのコピーとかその場でコピーすりゃいいでしょくらいに思っていたりして、書類不備で申請まで漕ぎ着けられないことが重なり、もういやだー! となったりしました。イミグレで受け付けてもらえなくて、泣きながら帰ったこともありましたよ、ほんとに。

というわけで、必要書類。ちなみにこれは私が申請した2012年9月頃の必要書類です。現在はまた違うかもしれませんので要確認。

  1. パスポート原本
  2. パスポート全ページのコピー&翻訳と公証
  3. 日本の犯罪証明原本&翻訳と公証
  4. アルゼンチンの犯罪証明
  5. 現住所証明(Certificado de domicilio)
  6. 出生証明書原本とそのコピー
  7. 子のDNIとそのコピー
  8. Residencia permanente代600ペソ
  9. DNI代40ペソ

なんと、戸籍謄本アポスティーユつきとその翻訳公証、というのがいらなかったのです。これがすごく時間とお金がかかったのに! これが必要と最初から疑ってもいなかったのはなんでだろう? これがなければもっとずっとはやくにDNIを手にしていたかもしれないのに…

とはいえ、申請から2週間もかからずにDNIが届きましたので、結果よしということで…

さて、実際の申請ですが、上記書類を揃えて、イミグレの予約を取って、申請に行けば良いだけなのですが、私はいろいろと調査不足、書類不足で何度も往復をしました。ちょっと覚え書き程度に…

1. パスポート原本
そのまま、パスポートそのものです。

2. パスポートのコピー
これが曲者でした。パスポートのコピー、とだけ聞いていたので、イミグレの中にあるコピー屋さんでコピーすりゃ良いだろう、まぁ、ちょうど手持ちに一枚(写真のところ)あるし、これでいいか、と。だがしかし、この「パスポートのコピー」とは、「パスポート全ページのコピー」のほか、その全ページの翻訳と公証が必要だったのです。イミグレの窓口でこれを言われたときはショックでした。がびーん! です。その場で翻訳家さんに連絡を取って、その足で翻訳を依頼しにいって、それでも出来上がるのは1週間後、イミグレの予約は取り直し、です。げっそり、げんなり、でした。

3. 日本の犯罪証明原本の翻訳と公証
これチートです。日本大使館経由で日本から取得するのですが、この取得に2ヶ月かかります。その間に日本にいってしまうとやりなおし、じゃあ日本でとろうとすると、アルゼンチンでビザをとれるという証明をもってこいとか言われます。そんなん無理ゲーすぎる。だってアルゼンチンの方はこれがないと申請させてくれないし。

そんなわけで日本大使館経由で申請し待つこと2ヶ月。届いた犯罪証明はおそらく大使館で開封され翻訳され、さらにそれをまた封印されて「本人が開けたら無効』と書いてあります。ところが、この「本人が開けたら無効」というのが曲者です。日本はよくこれをやりますが、アルゼンチン側からは翻訳と公証を求められます。つまり開けないと翻訳も公証も出来ないんですよ、はい。一度、ビザの申請相談の窓口で、「これ、私が開けたら無効とか書いてるからお兄さん開けてくれるかな」とイミグレの職員に頼んだら、なにいってんの? みたいな反応をされました。自分で開けたら? というので、でも私が開けたら無効なんだってよ、というと、じゃあ、大使館にでもいってそこで開けたら? と言われ、そもそも大使館側が、本人開封無効っていってるの、と、もうらちがあきませんでした。

結局、自分で開封し、翻訳家さんに一部を翻訳してもらい(一部英語の部分があるのでそれをスペイン語化)、さらに公証をもらってクリア。「本人開封無効」とかかかなくていいのに…

4. アルゼンチンの犯罪証明(antecedentes penales)
これは、簡単だった気がします。Registro National de Reincidenciaへ行って申請をすると、証明書の番号をくれます。そしてあとで自分でウェブサイトから証明書をダウンロード&プリント。

5.現住所証明
カピタルなら最寄りの警察署、カピタル外ならRegistro Civilへいって申請。カピタルでは翌日にその住所に人が来て本人がいると確認されれば証明が出ます。私はカピタル外だったので、Registro Civilへ公共料金の領収証等を持っていき、その場で証明してもらいました。

6, 7.子の出生証明書、DNIの原本とそのコピー
これはそのまま、です。

8, 9. この金額は、これは2012年9月の段階なので、今はいくらになっていることやら…

これら書類とお金を持っていくと、2週間以内に自宅にDNIが届きました。一説には数ヶ月待ち、ということも聞いていたので、自分の出国までに間に合うかどうかドキドキでしたが、ちゃんと2週間以内に届きました。やるじゃん、アルゼンチン。

ピカピカのtarjeta DNIを手にしたとたん、とっても嬉しくて、何度もイミグレを往復したことやら、いろんな証明を集めたことやら、泣きそうになったこともいい思い出。これで私はいつでもこの国で好きなように暮らして働いていいんだ! という喜びでいっぱい。これってすごいことだよね。

って、まぁ、今はアルゼンチンを離れちゃっているのですが、いずれまた戻って暮らしたいので、そのときにはもうこういう手続きはいらないんだなぁ、嬉しい。

他にもいろんな手続き関連の記録があるので、ぼちぼちあげていこうと思います。

その国の言葉を話すこと

ちょっと前の話。日曜日のベルグラーノ駅にて。

中華街で買い物を終え、友人と小さい人と3人で電車を待っていた。ちょうどそばには小さな赤ちゃんが。そのご両親に「何ヶ月ですか?」と、そしてその赤ちゃんには「かわいいね~」とそれぞれスペイン語で話しかけた。うちの小さい人には何と言ったか覚えていないけれど、たぶん「ほら赤ちゃんがいるよ」とかそういったことをいったんだと思う、日本語で。

隣に座っていたおばさんたちも、小さい人たちを目を細めて眺めてくださって、私たちも小さい人同士のコミュニケーションをほのぼのと眺めていた。

「ちょっと、お伺いしたいんだけど」

と、ちょっと離れたところに座っていたおばさんが、慇懃無礼な感じで話しかけてきた。

「はい、なんですか?」と私。「あなたはどうしてご自分のお子さんに、この国の国語であるアルゼンチン語(EspañolでもCastellanoでもなく、Argentinaと言われた)で話しかけないの?」とおばさん。「なぜって、私たちは日本人ですから」と私。まぁ、小さい人はアルゼンチン人でもあるのだけれど。おばさん「ここはアルゼンチンですから、アルゼンチン語で話すべきです」、私「もちろん他の人に対してはスペイン語を話しますし、他の皆さんがスペイン語で彼女に話しかけてくれることに関しては大歓迎ですが、私と彼女の間では日本語で話します」。おばさん「それは、私に対する尊敬にかけているわ! あなたが他の言語で彼女に話しかけるのを聞いていると、とても侮辱された気分になる」… と。

私「しかし彼女は日本人なので、日本語を定着させる為にも私が日本語で話しかけないといけない」
おばさん「そんなことは家でやって。一歩外に出たらアルゼンチン語を話すべき、たとえあなたたち二人の会話でも」
私「そうはいっても例えばあなたは日本に旅行に行ったとして、お連れの方と日本語で話すのですか、二人だけでも」
おばさん「わたしはアメリカに行ったときは、息子と英語で話しましたわよ!」
私「いや、英語の国じゃなくて… 」
おばさん「あなたたちが日本語で話していると侮辱された気分になる」
私「….」
おばさん「侮辱しないで!」
私「えーと、もしあなたも含めてみんなで会話をしていて、その中で私たちだけ日本語で話しているって言うならまだしも、今会話にはいってすらいなかったじゃないですか」
おばさん「でも、わたしはそれでも、私に対する尊敬にかけるように感じるの! この国ではアルゼンチン語で話しなさい。憲法にそう書いてあるの」

とまぁ、こんなかんじで言い合い風になった。他にも色々言われた&いったけれど。しかし、自分のスペイン語力が足りず言いたいことがうまく言えなかったのが悔しい。なぜ小さい人に日本語で話しかけるのかと言う理由は、例えば、子供の言語の発達に関して私が考えていることとか、わたしの適当スペイン語をコピーされては困るとか、そういうことも絡んでくるわけで。まぁ、そんなことを説明しても納得してくれるような人ではなかったとは思うけれど。

でもこの一件、このおばさんがおかしいんだ、と一蹴することができなかった。

特に英語圏の人に多いが、非英語圏へ行っても英語が通じるもんだと決めてかかって、英語が通じない=何で英語しゃべれないの? というような態度を取る人がある。あれは確かに感じが悪い。しかし、自分もタイで、込み入った話になると結局は英語で押し通してきたと言う過去があり、そういった人と紙一重なんじゃないかと言う気持ちもあって、今回おばさんに「Falta respecto(尊敬にかける)」と言われてちょっと考えてしまった。

確かにタイにいた頃の私は、タイに対して失礼だった。今ではそう思う。

例のおばさんを侮辱するつもりはこれっぽっちもなかったし、おばさんはちょっと極端な人かもしれない。それに、やっぱり私と小さい人の間は日本語で話すのはやめるつもりはない。でも、確かに、その国に住ませてもらっているのだから、言葉を覚えるのは当然のことだと思う。少なくとも小さい人はアルゼンチン人であり、私も永住権をとろうかとしている人間なのだから。旅行者や駐在員とは違う。これからどれくらいこの国にいるかわからないけれど、国を出たって小さい人はもう死ぬまでアルゼンチン人なのだし、当たり前にアルゼンチンの言葉を理解していないといけない。

そんなことを考えさせられる一件だった。

アルゼンチンは本当に遺伝子組換え作物大国なのか調べてみた

遺伝子組換え作物について。このあいだは「遺伝子組み換え作物の仕組み – Sabe la tierraへ行って考えた」というポストで、勢いで、もう豆腐は買わないぞ! なんて書いてしまったが、実際ほんとうにどれくらい日常的に遺伝子組換え作物を食べているんだろうか、と気になって調べてみている。

まず、「アルゼンチンは遺伝子組換え作物ばっかり」という表現はあまり正しくなかった。アルゼンチンは遺伝子組換え作物生産大国で、ものすごく広い土地を遺伝子組換え作物生産用に使っているが、日常食卓に上る多種多様な野菜がみんな遺伝子組換えな訳ではなく、限られた数種類の作物を大量に作っている、らしい。

少し古いが、2002年の資料に、アルゼンチンでの認可体制から、生産、流通までについてまとめてあるものがあったので、そこから読み解いてみる。

参考にした資料はこちら:アルゼンチンにおける遺伝子組換え作物をめぐる状況ー認可体制、生産・輸出、流通ー
http://www.maff.go.jp/primaff/koho/seika/project/pdf/gmo3-3-2.pdf

2002年の段階でアルゼンチンで認可されている遺伝子組換え作物の品種の総数は567。とはいっても、作目で言うと、大豆、綿、トウモロコシの3種のみ。2002年の段階では小麦はまだ実用化されされておらず、研究段階だったようだ。現在までに実用化され、認可が下りたのかどうかはわからないが、2011年の別の資料(http://www.monsanto.co.jp/data/countries.html)を見ると、相変わらずアルゼンチンの主要遺伝子組換え作物は前述の3種で、小麦は資料には上がってきていないので、おそらく認可されていたとしても微々たる量であろう。

2002年段階では、アルゼンチンの遺伝子組換え作物の作付け面積は1350万ヘクタールだったものが、2011年では2370万ヘクタールにものびている。そのほとんどが大豆である。それまで他の作物を作っていた土地を、どんどん遺伝子組換え大豆用に切り替えているわけだ。

遺伝子組換え作物は手がかからないので農民はいらない。中小農民から土地を買い上げ(或は脅し取ったりということもあり、アムネスティ・インターナショナルが人権問題にしているらしい)、大規模農場はさらに大規模に、中小農民は土地も仕事もなくなって飢えてゆく。

そして、先日は遺伝子組換え種子の会社モンサント一社を槍玉に挙げてしまったが、認可されている種子はモンサントの他、アグレボ、カーギル、チバガイギーなど他の多国籍企業のものも多い。とはいえ、やはりモンサントは世界の遺伝子作物種子のシェアの90%ほど、と独占に近い状態であるようだし、アルゼンチンにはモンサントアルヘンティーナがあるようなので、やはりモンサントのシェアは大きいだろう。

これらの大企業は種子を開発して農場へ売る。契約で実った種子から次の年の作物を作ることは禁じられているため、農場は毎年大企業から種子を買う。種子とセットで除草剤も買わなくてはいけない。大企業の作った仕組みにすっかり組み込まれている。

アルゼンチンの遺伝子組換え作物の輸出先は、EU諸国からアジア諸国へとシフトしてきているようだ。先頃、温首相がアルゼンチンまでやってきて、これからどんどんアルゼンチンから食料買います、と言っていたようだし、中国産の大豆加工製品はアルゼンチンから来た大豆でできているかもしれない(中国では遺伝子組換え大豆は資料には上ってきていない)。

中国は広大な土地でたくさんの作物を作って外国に売り、アルゼンチンから食料を買う。アルゼンチンは中国むけに自国の土地で大量の大豆を作り、自国民が食べる作物を作る土地がなくなってゆく。そしてそこに輸入規制。

なんだかなぁ、と思う。

人々はグローバリゼーションを叫び、資本主義における勝ち組である大企業が、弱小国家を食いつぶしていく。農民たちは目の前に自分たちが食べる作物があるのに、それを刈り取って外国に売るための遺伝子組換え大豆を作る。そして、飢えていく。

なんだかなぁ…。グローバリゼーションってなんだっけ。

先日の、ウルグアイの大統領の幸福論スピーチを思い出した(そういうウルグアイも大豆とトウモロコシは遺伝子組換え作物を作っている)。

バイオテクノロジーが悪いなんてこれっぽっちも思っていない。遺伝子組換え怖いしからとにかくいや! というヒステリックな気持ちでもない。絶対オーガニックじゃなきゃ、とかそういうストイックな主義でもない。

これは、もはやバイオテクノロジーでも、環境問題でも、食料問題でも、ましてや農業でもなくて、政治問題だ。

わたしは単なる天邪鬼なのかもしれない。遺伝子組換え作物やらその技術が憎いわけではなく、この一部大企業が作り上げた搾取システムのなかに組み込まれるのが嫌なのだ。だからやっぱり、遺伝子組換え大豆を使っているであろう豆腐はあまり買いたくない、と思うわけです。まぁ、すべてを避けるのは難しいかもしれないけれど…

今回参考にさせていただいた資料、記事等はこちら。